ホンダの認証試験における不正行為が明るみに出た。騒音試験やエンジン出力試験でデータの改ざんが行われていたことが発覚した。三部敏宏社長は記者会見で法令違反を認め、順法性に欠けていたと釈明したが、その背景には自動車業界の深層が潜んでいる。
ワーストケースでの試験 - 実質的な性能は保証できていた?
- ホンダは騒音試験で、法規より厳しい条件で試験を行っていた。
- 定常走行では車両重量を重くし、加速走行では軽くして試験を実施。
- この「ワーストケース」での試験データを規定内の重量で測定したものとして提出。
ホンダは、新車開発時の設計変更に伴う車両重量の変化に備え、あらかじめ法規より厳しい条件で騒音試験を行っていた。この方法なら再試験の必要がなく、実際の騒音も大きくなるはずだ。三部社長は「商品の性能を完全に保証するという観点で言うと、商品は保証できているという感覚が当時の現場にあった」と弁明した。
しかし、国土交通省は「試験の方法が法規から逸脱しているため、法令違反に当たる」と指摘。ユーザーとしては、実質的にホンダのクルマが騒音基準を満たしているのであれば、認証試験をパスできないのか疑問が残る。
エンジン出力の上方修正 - 高性能を誇るホンダらしい行為
- エンジン出力試験で、測定データをカタログデータに近づけるよう書き換えが行われていた。
- 8件中6件は、従来のカタログデータより出力が上回ったため下方修正。
- 残り2件は上方修正と下方修正の両方。
ホンダは、新型車のエンジン出力が従来モデルのカタログデータを上回ったため、わざと従来のデータに近い値に書き換えていた。三部社長は「従来のエンジンより出力が出すぎたため、少し落とした数字にした」と説明した。高級スポーツカーの2代目NSXも含まれていたことから、ホンダが誇る高性能車の実力を示す行為だったと考えられる。
自動車雑誌などが実施する実測テストでは、メーカーのカタログデータを下回ることが多い。しかし、ホンダの認証試験では多くがカタログデータを上回っていたことになる。クルマ好きの間では関心が高いテストの結果だけに、ユーザーの失望は避けられないだろう。
自動車業界の闇 - メーカーと行政の対応に疑問
- ホンダの行為は法令違反となり、国交省は立ち入り検査を行う方針。
- メーカーと行政の一連の対応をユーザーはどう受け止めるのか。
ホンダの不正行為は法令違反に当たり、三部社長もコンプライアンス(法令順守)の欠如を認めた。国交省は立ち入り検査を行い、安全性などに問題がないか確認試験を実施する方針だ。しかし、自動車業界の深層にある慣習や考え方が、今回の不正行為につながった可能性もある。
メーカーと行政の一連の対応をユーザーはどう受け止めるのだろうか。実質的な性能が保証されていれば、厳密な試験方法の違反は許容されるべきなのか。自動車業界の闇に光を当て、透明性の高い体制づくりが求められている。
まとめ
ホンダの認証試験における不正行為は、単なる法令違反以上の問題を含んでいる。自動車業界の慣習や考え方が、今回の事態を招いた可能性がある。メーカーと行政の対応に疑問が残り、透明性の高い体制づくりが求められている。ユーザーの視点に立ち、実質的な性能保証と適切な試験方法の両立を図ることが重要だ。自動車業界の闇に光を当て、信頼回復につながる取り組みが必要不可欠である。